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京都在住          サンドブラストガラス工芸 作家アトリエ日記     創作活動・お気に入りの スポット・音楽・グルメ   などなど


by keiko-primavera
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薔薇のオーバルプレート

薔薇のオーバルプレート_d0175151_17144091.jpg


昨日お教室の後 アトリエで一人になってからこの作品を作りました
実はこの作品を作りはじめたのは5月のことでした
GWの連休明けに父が最後の入院をして 病室に付き添っている間
ただ座っているだけの私を父が心配して早く帰らせようとするので
病室でもできる作業を持って行き
勤務先からの帰り道 病院に寄り 面会時間が終わるまで
マスキングテープを貼ったり
図案を描き写したり
カッターナイフで切り取ったり
そんな作業をしながら父が横になっているすぐ傍で
毎日過ごしました
父は「宿題がここでできるなら 居てくれると安心だ」と言い
早く帰んなさい とは言わなくなりました

父の病室で砂を吹くばかりに準備ができたテーブルウェアが
このプレートを含め他にもいくつかありましたが
父が亡くなってからずっと
どうしてもその作品に手をつけることができませんでした
充分な話し合いと心づもりの時間と機会を与えられ
家族皆で迎えたはずの父の最期でしたが
自分にしか判らないとても些細なことがいくつかありました
ひとつは 父が亡くなった5月のままアトリエのカレンダーをどうしてもやぶけなかったこと
そして 父の傍で作り始めた作品の続きをどうしても作れなかったこと
ところがある日 アトリエに来客があった折
「カレンダー 5月のまま忘れてますよ」と笑って言われて
全く気が進まないにもかかわらず
はからずも半ば強制的にやぶかざるを得ない状況になりました
心の中でとても迷いましたが
そろそろこんなことも言っていられないな と思ったものですから
どなたか人がいてくださる時に便乗してしまおうと
思い切って「えいっ」とやぶきました
自分の気持ちに自分が手探りの状態でしたが
不思議なほどに 全く平気でした
早くやぶいたら良かったな と心の中で少し笑いました
それでその方がお帰りになってからすぐに
先日こちらでもご紹介した若鮎のぐい飲みを作りました

私にとって両親は絶対的な存在で
両親のどちらか片方がいなくなる自分の生活なんて
考えたこともありませんでした
これらの作品を作り始めた時には
確かに父がすぐ傍にいたはずなのに 今その父はどこにもいない
そんな風に思い込んでいて
カレンダーをやぶいたり 作品を仕上げるのが怖かったのだとわかりました
それでも時間は流れて行くし 残された私達は生きて行く
父の居ない状況を悲しむことを 父は決して喜ばない
そしてこんな事を独り考えながらアトリエにいる私のことを
きっと父は絶えず見てくれているし
私の心の中にはいつも父がいてくれる
こう思えるようになるまでほぼ4ヶ月かかりました

さて 長くなりましたが画像は薔薇のオーバルプレートです
薔薇の花と蕾は思い切り立体的に彫りました
深く彫った箇所は手を切りそうなほど鋭利でしたので
全て面取りをしたら すご~く時間がかかってしまった(笑)
5月の入院のちょうどその時
自宅のお庭に母が育てた大輪の真っ赤な薔薇が咲き
病室の父の枕元に一輪 飾っていました
父が「綺麗や~」「良い香りや~」と大変喜び
目を細くして眺めていたことを昨日の事のように思い出します
by keiko-primavera | 2014-10-26 20:05 | ガラス